特定技能1号の外国人を受け入れるときによく出てくる言葉が、
「義務的支援」
です。
漢字が並んでいて少し難しそうですが、意味はそれほど難しくありません。
簡単にいうと、
義務的支援=会社が必ず行わなければならない支援
です。
特定技能1号の外国人が日本で安心して働き、生活できるように、受入れ企業には必要な支援を行うことが求められています。
今回は「義務的支援」について、できるだけ簡単に説明します。
そもそも、なぜ支援が必要なの?
たとえば、あなたが突然外国で働くことになったと考えてみましょう。
言葉がよくわかりません。
家の借り方もわかりません。
銀行口座の作り方もわかりません。
ゴミの出し方もわかりません。
病気になったときに、どこの病院へ行けばいいのかもわかりません。
かなり不安ですよね。
日本へ来る外国人も同じです。
そこで特定技能1号では、
外国人が日本で安心して働き、生活できるように支援する仕組み
が設けられています。
「義務的」ってどういう意味?
「義務的」という言葉は、
やっても、やらなくてもいい
という意味ではありません。
受入れ企業は、法律や制度上求められている内容に沿って支援を実施する必要があります。
つまり、
「忙しいから今回はやらない」
「本人が何も言ってこないから支援しない」
というわけにはいきません。
必要な支援を計画し、適切に実施することが重要です。
支援が必要なのは「特定技能1号」
ここは覚えておきましょう。
支援計画を作成し、義務的支援を行う仕組みの対象になるのは、原則として
特定技能1号
です。
特定技能2号については、1号と同じ支援計画を作成して義務的支援を行う仕組みにはなっていません。
誰が義務的支援をするの?
基本的には、
特定技能外国人を雇用する会社
です。
特定技能では、外国人を雇用する会社を
「特定技能所属機関」
と呼びます。
受入れ企業は、
1号特定技能外国人支援計画
を作成して、それに基づいて支援を行います。
会社だけでは難しい場合は?
「外国語に対応できる社員がいない」
「支援の経験がない」
「自社だけで全部行うのは難しい」
という会社もあるでしょう。
その場合には、
登録支援機関
に支援の全部または一部を委託することができます。
登録支援機関とは、特定技能1号外国人への支援を会社に代わって行うことができる機関です。
ただし、登録支援機関へ委託したからといって、外国人を雇用する会社としての責任までなくなるわけではありません。
義務的支援には何があるの?
義務的支援は、大きく10項目に整理できます。
① 事前ガイダンス
外国人が働き始める前に、
仕事内容
給料
労働時間
日本での生活
などについて説明します。
重要なのは、
外国人が十分に理解できる言語で説明すること
です。
説明した側が、
「ちゃんと説明しました!」
と言っても、外国人本人が理解できていなければ意味がありません。
② 出入国するときの送迎
外国人が日本へ入国するときに、必要な送迎を行います。
また、帰国するときにも必要な送迎を行います。
初めて日本へ来た外国人が、
「空港には着いたけれど、ここからどうすればいいの?」
とならないようにサポートします。
③ 住居や生活に必要な契約の支援
日本で生活するには住む場所が必要です。
そこで、
住居を確保するための支援
を行います。
さらに、
銀行口座
携帯電話
電気・ガス・水道
などの契約についても必要な支援を行います。
④ 生活オリエンテーション
日本で生活するために必要なルールなどを説明します。
たとえば、
ゴミの出し方
交通ルール
電車やバスの利用方法
病院の利用方法
災害が起きたときの対応
警察・消防への連絡方法
などです。
日本人にとって当たり前のことでも、外国人にはわからないことがあります。
そのため、丁寧に説明することが大切です。
⑤ 日本語を勉強する機会を提供する
外国人が日本語を勉強できるように、
地域の日本語教室を紹介する
日本語教材について情報を提供する
オンライン学習について案内する
などの支援を行います。
会社が自分で日本語学校を開く必要がある、という意味ではありません。
外国人が日本語を学べる機会につなげることが大切です。
⑥ 相談や苦情に対応する
外国人が、
「仕事で困っています」
「生活で困っています」
「会社の人に相談しにくいです」
といった悩みを抱えることがあります。
そのような場合に、
相談や苦情を受けられる体制
を整えます。
必要に応じて助言や対応を行います。
外国人が十分に理解できる言語で相談できることも重要です。
⑦ 日本人との交流をサポートする
外国人が日本の地域社会で孤立しないように、
地域のお祭り
イベント
交流会
など、日本人と交流できる機会について情報提供や参加の支援を行います。
会社とアパートを往復するだけでは、日本での生活になじめないこともあります。
地域とのつながりをつくることも支援の一つです。
⑧ 一定の場合の転職支援
会社側の事情などによって、外国人本人に責任がないのに雇用を続けられなくなる場合があります。
そのような場合には、
次の仕事を探すための支援
などが必要になります。
たとえば、
転職先を探すサポート
推薦状など必要な書類の作成
求職活動に必要な時間の確保
必要な行政手続きについての情報提供
などがあります。
ただし、
外国人が自己都合で退職する場合まで、必ず会社が次の仕事を探さなければならない
という意味ではありません。
⑨ 定期的な面談
外国人が問題なく働き、生活できているかを確認するため、
定期的な面談
を行います。
外国人本人だけでなく、その外国人を監督する立場の人とも面談します。
「仕事で困っていませんか?」
「生活で困っていませんか?」
「会社で嫌なことはありませんか?」
などを確認します。
問題が起きてから対応するだけではなく、
問題を早く見つける
ためにも重要な支援です。
⑩ 行政手続きの支援
日本で生活していると、市役所や区役所などでさまざまな手続きが必要になります。
そこで、
手続きについて説明する
必要に応じて役所へ同行する
書類作成をサポートする
などの支援を行います。
外国人が一人で難しい手続きを抱え込まないようにします。
「義務的支援」と「任意的支援」は何が違う?
特定技能の支援を理解するときに重要なのが、
義務的支援
と
任意的支援
の違いです。
簡単にすると、
| 義務的支援 | 任意的支援 | |
|---|---|---|
| 意味 | 必ず行う必要がある支援 | 必要に応じて行う追加的な支援 |
| 支援計画 | 必要な内容を記載して実施 | 追加的に行う支援 |
| 目的 | 日本で安心して働き生活するために必要な支援 | より充実した生活・就労を助ける支援 |
つまり、
義務的支援=最低限必要な支援
任意的支援=さらに手厚くする支援
というイメージです。
任意的支援なら何もしなくていい?
「任意」と聞くと、
やらなくてもいいから関係ない
と思うかもしれません。
しかし、そう単純ではありません。
外国人の状況によっては、義務的支援だけでなく、さらにサポートしたほうがよいこともあります。
たとえば、
日本語の勉強をもっとサポートする
地域交流の機会を増やす
仕事に必要な専門用語を教える
生活について追加の相談に乗る
といった支援です。
こうしたサポートは、外国人が安心して働き続けることにもつながります。
支援計画に書いた任意的支援にも注意
ここは少しだけ実務的なポイントです。
「任意的支援だから、支援計画に書いてもやらなくていい」
と考えるのは適切ではありません。
任意的な支援であっても、支援計画に記載して実施することにした内容については、計画に沿って実施する必要があります。
そのため、
実際にできる支援内容を考えて計画を作る
ことが重要です。
義務的支援のお金を外国人に払わせてもいい?
原則としてできません。
義務的支援に必要な費用について、
外国人本人に直接または間接的に負担させない
ことが重要です。
たとえば、
「登録支援機関に毎月費用を払っているから、その分を外国人の給料から引こう」
といった扱いには注意が必要です。
支援は会社側が負担して行うものと考えましょう。
「10個全部やったからOK」ではない
ここも重要です。
義務的支援は、
チェックリストに10個チェックを付ければ終わり
ではありません。
外国人が本当に理解できているか。
困ったときに相談できるか。
生活上の問題が解決できているか。
必要な支援が適切に行われているか。
そこまで考える必要があります。
支援の目的は「自立」
支援というと、
外国人の代わりに全部やってあげる
イメージを持つかもしれません。
しかし、それだけが支援ではありません。
たとえば市役所の手続きなら、
最初は一緒に行く。
↓
手続きの方法を説明する。
↓
次からは本人でもできるようになる。
という形も大切です。
つまり、
「外国人が日本で自立して生活できるようにする」
ことも支援の重要な目的です。
義務的支援を簡単に覚えよう
10項目を時系列で考えるとわかりやすくなります。
来日前
→ 事前ガイダンス
日本へ来る
→ 出入国時の送迎
生活を始める
→ 住居・契約支援
→ 生活オリエンテーション
日本で働き、生活する
→ 日本語学習
→ 相談・苦情対応
→ 日本人との交流
→ 定期面談
→ 行政手続き支援
会社側の事情などで働き続けられない
→ 転職支援
こう考えると、
外国人が日本へ来る前から、日本で働いて生活する期間までを支える制度
だとわかります。
まとめ
特定技能の「義務的支援」とは、
特定技能1号外国人が日本で安心して働き、生活するために、受入れ企業が必ず行う必要がある支援
です。
大きく10項目あります。
①事前ガイダンス
②出入国時の送迎
③住居・生活に必要な契約の支援
④生活オリエンテーション
⑤日本語学習の機会の提供
⑥相談・苦情への対応
⑦日本人との交流促進
⑧一定の場合の転職支援
⑨定期的な面談
⑩行政手続きの支援
そして、
義務的支援=必要な支援
任意的支援=さらに充実させる支援
と覚えるとわかりやすいでしょう。
ただし、一番大切なのは、
「制度だからやる」のではなく、「外国人が安心して日本で生活できるように支える」
という考え方です。
外国人が安心して生活できれば、仕事にも集中しやすくなります。
外国人に長く活躍してもらうためにも、支援はとても大切なのです。
