特定技能1号の外国人を受け入れるときには、
「事前ガイダンス」
を行う必要があります。
「ガイダンス」と聞くと、学校の入学説明会のようなものを想像するかもしれません。
イメージとしては、それほど間違っていません。
簡単にいうと、
事前ガイダンス=外国人が働き始める前に、仕事や日本での生活について大切なことを説明すること
です。
今回は、特定技能1号の「事前ガイダンス」について、できるだけ簡単に説明します。
なぜ事前ガイダンスが必要なの?
外国人が日本で働くことになったと考えてみましょう。
本人には、
「給料はいくら?」
「どんな仕事をするの?」
「何時間働くの?」
「日本ではどこに住むの?」
「日本へ行くために何かお金を払う必要があるの?」
「困ったときは誰に相談するの?」
など、たくさんの疑問があるでしょう。
これらをよく理解しないまま日本へ来てしまうと、
「聞いていた話と違う!」
というトラブルにつながる可能性があります。
そこで、働き始める前に重要な情報をきちんと説明します。
これが事前ガイダンスです。
誰に行うの?
事前ガイダンスの対象になるのは、基本的に
特定技能1号の外国人
です。
特定技能1号では、外国人が日本で安心して働き、生活できるように「1号特定技能外国人支援計画」を作成します。
事前ガイダンスは、その支援の一つです。
誰が説明するの?
基本的には、外国人を雇用する
受入れ企業(特定技能所属機関)
が支援を行います。
ただし、会社が登録支援機関へ支援を委託している場合には、
登録支援機関
が事前ガイダンスを行うこともあります。
つまり、
受入れ企業
または
委託を受けた登録支援機関
が行うと考えるとわかりやすいでしょう。
いつ行うの?
名前のとおり、
「事前」に行います。
具体的には、1号特定技能外国人と雇用契約を結んだ後、在留資格に関する申請を行う前に実施するのが基本です。
海外から外国人を呼ぶ場合だけではありません。
すでに日本にいる外国人が、別の在留資格から特定技能1号へ変更する場合にも関係します。
何を説明するの?
事前ガイダンスでは、外国人が日本で働くうえで重要なことを説明します。
代表的な内容を見てみましょう。
① どんな仕事をするのか
まず、
日本でどんな仕事をするのか
を説明します。
たとえば、
「自動車整備の仕事をします」
「この工場で働きます」
「勤務時間は8時から17時です」
などです。
仕事内容や働く場所などについて、本人が理解できるように説明します。
② 給料や労働条件
外国人にとって非常に重要なのが、
給料
です。
事前ガイダンスでは、
報酬額
労働時間
休日
など、労働条件について説明します。
特に、
「基本給はいくらなのか」
「どのような費用が給料から引かれるのか」
など、お金については誤解が起きないように説明することが重要です。
③ 日本で行うことができる活動
特定技能は、
日本で何の仕事でも自由にできる在留資格
ではありません。
決められた分野・業務の範囲で働きます。
そのため、
「あなたは日本でこのような活動をします」
ということも説明します。
④ 日本へ入国するときに必要なこと
海外から日本へ来る外国人の場合には、
日本へ入国するときに必要となる手続きなど
について説明します。
国によっては、日本側の手続きだけでなく、送り出し国側で必要な手続きがある場合もあります。
⑤ 保証金や違約金について
ここは非常に重要です。
外国人が日本で働くために、
不当に高額な保証金を預ける
仕事を辞めたら違約金を払う契約をする
といった問題があってはいけません。
そのため、保証金の徴収や違約金などの契約がないことについて確認します。
外国人が借金などによって不当に縛られないようにするための大切な確認です。
⑥ 支援にかかる費用について
特定技能1号では、会社や登録支援機関がさまざまな義務的支援を行います。
その義務的支援に必要な費用を、
外国人本人に負担させることはできません。
「登録支援機関にお金を払っているから、その分を外国人の給料から引きます」
ということはできません。
事前ガイダンスでも、このような支援に関することを説明します。
⑦ 困ったときの相談先
日本で生活していると、困ったことが起こるかもしれません。
そこで、
困ったときに誰へ相談すればよいのか
についても説明します。
「会社で困ったときはここへ相談してください」
「生活について困ったときはこの担当者へ連絡してください」
など、相談方法を明確にしておきます。
⑧ 生活についての基本的な情報
日本で生活するために必要となる情報についても説明します。
ただし、来日後には別途、
生活オリエンテーション
という支援があります。
事前ガイダンスと生活オリエンテーションは似ていますが、役割が少し違います。
事前ガイダンスと生活オリエンテーションの違い
この2つは混同しやすいので整理しましょう。
| 事前ガイダンス | 生活オリエンテーション | |
|---|---|---|
| 主なタイミング | 働き始める前・申請前 | 日本で生活を始める段階 |
| 主な内容 | 雇用条件、活動内容、入国・支援など | 日本の生活ルールや公共サービスなど |
| 例 | 給料、仕事内容、支援内容 | ゴミ、交通、病院、防災など |
簡単に覚えるなら、
事前ガイダンス=「日本で働く前の説明」
生活オリエンテーション=「日本で生活するための説明」
です。
日本語で説明すればいいの?
相手が十分に理解できないのであれば、日本語だけで説明して終わりではいけません。
事前ガイダンスでは、
外国人本人が十分に理解できる言語
で説明することが重要です。
たとえば外国人が日本語を十分に理解できない場合には、
母国語
通訳
などを利用して、本人が内容を理解できるようにします。
大切なのは、
「説明したか」ではなく「本人が理解できたか」
です。
紙を渡すだけでもいい?
基本的に、
書類を渡して「読んでおいてください」で終わり
と考えないほうがよいでしょう。
事前ガイダンスは、対面や一定の方法によって本人に説明する必要があります。
オンラインによる実施も可能ですが、本人の表情などを確認できる方法で行う必要があります。
事前ガイダンスには時間の基準もある
事前ガイダンスは、
必要な内容をきちんと理解できるように説明する
必要があります。
出入国在留管理庁の運用では、事前ガイダンスは原則として、
3時間程度
行うことが目安とされています。
ただし、
「3時間座っていればOK」
という意味ではありません。
外国人本人が必要な内容を理解できるよう、丁寧に説明することが大切です。
事前ガイダンスの簡単な流れ
実際のイメージは、
STEP1 特定技能外国人と雇用契約を結ぶ
↓
STEP2 事前ガイダンスの日程を決める
↓
STEP3 本人が十分理解できる言語を確認する
↓
STEP4 仕事内容・給料・支援などを説明する
↓
STEP5 本人からの質問に答える
↓
STEP6 必要な記録を残す
↓
STEP7 在留資格に関する申請へ
という流れです。
会社が注意したいこと
事前ガイダンスで一番避けたいのは、
「形式だけの説明」
です。
たとえば、
「給料は契約書に書いてあるから読んでください」
「生活については日本に来ればわかります」
「質問がなければ終わります」
という対応では、外国人が十分に理解できない可能性があります。
外国人本人の立場になって、
「自分が初めて外国で働くなら何が不安だろう?」
と考えて説明することが大切です。
「聞いていた話と違う」を防ぐ
事前ガイダンスには、
トラブルを防ぐ
という大きな意味があります。
たとえば、
「もっと給料が高いと思っていた」
「この仕事をするとは聞いていなかった」
「寮費がかかることを知らなかった」
「こんな勤務時間だとは思わなかった」
という問題です。
最初にきちんと説明しておけば、会社と外国人の認識のズレを減らすことができます。
つまり事前ガイダンスは、
外国人を守るだけでなく、会社を守るためにも重要
なのです。
事前ガイダンスは「最初の信頼づくり」
外国人にとって、これから働く会社に対する最初の印象はとても重要です。
わからないことを質問したときに、
「そんなこともわからないの?」
と言われる会社と、
「わからないことがあったら何でも聞いてください」
と言ってくれる会社では、安心感がまったく違います。
事前ガイダンスは単なる手続きではありません。
外国人と会社の最初の信頼関係をつくる機会
でもあります。
まとめ
特定技能の事前ガイダンスとは、
特定技能1号外国人が働き始める前に、仕事や日本での生活について大切なことを説明する支援
です。
特に、
仕事内容
給料・労働時間などの労働条件
日本で行う活動
入国に関すること
保証金・違約金に関すること
支援について
相談先
などを、外国人本人が十分に理解できるように説明します。
そして一番大切なのは、
「説明すること」ではなく「理解してもらうこと」
です。
事前ガイダンスを丁寧に行うことで、
「聞いていた話と違う」
というトラブルを防ぎ、外国人が安心して日本での仕事と生活をスタートできるようになります。
事前ガイダンスは、
特定技能外国人への最初の支援であり、会社との最初の信頼づくり
と考えるとわかりやすいでしょう。
